コラム

ストレスチェック制度とは?実施方法などを解説

2023.04.14

ストレスチェックは、労働安全衛生法の改正によって50人以上の労働者がいる事業場で義務付けられた検査です。

 

従業員のストレスを定期的にチェックすることで、従業員の心身の状態に気付き、メンタルヘルスの不調を低減させるための取り組みです。

 

経営陣にも、ストレスチェックの結果を生かして、従業員が安心して働ける職場環境づくりのきっかけを与えています。

ストレスチェックとは?

ストレスチェックとは、調査票を用いてストレスの原因、心理的負担や心身の症状、職場における周囲のサポートの3つの領域について検査を行い、職場に高ストレス者がいないかどうかを確認するものです。

 

ストレスチェックでは、従業員のストレスを点数化して評価します。

 

その評価結果をもとに、医師による面接指導が必要かどうかを企業と従業員が判断するのです。

中小企業に実施義務はあるのか?

大企業や中小企業といった企業規模に関わらず、常時 50名以上の従業員を雇用する企業に、ストレスチェック制度の実施義務があります。

 

実施を忘れてしまった場合、国の法律で決められているため、罰則として罰金や法令違反にあたる可能性も考えられるので注意しましょう。

 

また、検査後は、企業が労働基準監督署に内容を報告する義務が設けられています。

 

今後、条件が変更される可能性もあるため、継続して事業を続けていくためにもストレスチェックは毎年欠かさないようにしましょう。

 

それ以外の企業(常時 50 名未満の労働者を使用する企業)については、ストレスチェックの実施は当分の間、努力義務とされています。

ストレスチェック実施報告を怠ったら?

ストレスチェックの実施報告を怠ったり、虚偽の報告をした場合は、労働安全衛生法120条5項に基づき、最大50万円の罰金が課される可能性があります。

 

<労働安全衛生法 第十二章 罰則>

 

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
(中略)
五 第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかった者

 

 

労働者50名未満の事業場については、ストレスチェックの実施への義務はなく(努力義務)、報告への罰則もありません。

ストレスチェックの実施方法とは?

ストレスチェックの実施方法について見てみましょう。

 

1.調査票の配布

 

調査票の種類は、医師と職場の衛生委員会での審議で選べることになっています。

 

ですが、ストレスチェック制度では、57項目の「職業性ストレス簡易調査票」を使用することが推奨されています。

 

使用する調査票は、紙で配布してもいいのですが、個人情報流出防止の観点からオンラインで行うのがいいでしょう。

 

 

2.従業員による回答

 

調査票を配布したら、回答期間内に、従業員に回答してもらいます。

 

厚労省では、「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を無料配布していますので、Webツールを使うことで事務作業を簡素化することができます。

 

 

3.調査票の回収

 

紙で調査票を配布した場合は、調査票の回収が必要になります。

 

紛失を防止するために、なるべく1か所に集めるといいでしょう。

 

 

4.実施者による評価結果の分析

 

ストレスチェックの結果が出たら、医師や保健師が分析を行い、衛生委員会などで話し合います。

 

また、個々の結果についても、実施者が評価を行って高ストレス者を特定します。

 

 

5.高ストレス者への面接指導

 

万が一、高ストレス者が発見された場合、事業者が該当者に対して面接指導を行うことができます。

 

逆に、本人が面接指導を希望した場合、事業者は医師による面接指導を行う義務があり、申し出から1か月以内に行います。

 

面接指導の記録を作成し、5年間保存しなければいけません。

 

 

6.面談希望者への対応

 

高ストレス者だけではなく、事業者は面談希望者に対しても医師との面談指導を実施しなければなりません。

 

 

7.職場環境改善の検討

 

高ストレス者に対して面接指導を行った医師は、職場環境の改善について提言することが定められています。

 

事業者は、医師から受け取った提言をもとに職場環境改善を検討します。

 

ストレスの高い職場環境を放置すると、組織の生産性も低下するため、早めに対策を検討するのがいいでしょう。

ストレスチェックを実施する目的とは?

ストレスチェックを適切にするために、企業はストレスチェックを実施する目的をきちんと把握しなければいけませんので、ストレスチェックを実施する目的について内容を確認していきましょう。

過労やメンタル不調に対する予防策

仕事による心身の不調は、本人が病気になるなど、限界を超えるまで気づかない可能性があります。

 

企業がストレスチェックを取り入れることによって、従業員がストレスを認識するきっかけになります。

 

ストレスが高い場合、業務時間を調整したりして、仕事の負担を減らして、体と心のケアに取り組むことが大切です。

離職率の低下と社会復帰しやすい環境の構築

企業は、従業員が仕事でどんな不安を抱えやすいのかについて定期的に確認する必要があります。

 

問題点を改善することは、労働環境の改善につながるため、従業員が長く働きやすい職場を目指す対策につながります。

 

ストレスチェックを通して、従業員の声を聞く機会を設けれるため、従業員の離職率を下げる可能性にも期待できるでしょう。

 

ストレスチェックは、企業が長期的に経営し続けるために非常に重要だと言えます。

従業員が働き方を見つめ直せれる

キャリアアップを図るためには、仕事に対する働き方について、見直す機会を設けることは大切です。

 

勤務時間が長すぎると、ストレスを感じやすくなり、心身の不調を崩しやすくなったりと、仕事へ影響が出ますが、ストレスチェックに取り組むことで、従業員が、働き方やメンタルヘルスを見つめ直す機会になります。

企業への信頼度の向上

昨今、企業には、仕事とプライベートをバランスよく保つための取り組みが求められています。

 

ストレスチェックをすると、従業員のメンタルヘルスケアが実施できるため、企業は社会的な信頼を得られる可能性につながります。

 

また、従業員側からすると、企業へ自分の声を伝えるいい機会になります。

ストレスチェック実施にあたっての注意点とは?

企業がストレスチェックを実施するにあたって、注意点を配慮していると、従業員は、安心してストレスチェックを受けれます。

 

では、ストレスチェック実施にあたっての注意点について、見てみましょう。

検査内容の取扱い方

ストレスチェックの内容は、従業員の個人情報ですので、企業が内容を確認しないようにしましょう。

 

ストレスチェックの情報の漏えいは、法律に関わる問題になるため、従業員が安心してストレスチェックの回答ができるようにするためにも、個人情報の保護は大事です。

 

ストレスチェックに関する個人情報の取り扱いについて、事前にルールを従業員に伝えておくとスムーズに進められるでしょう。

ストレスチェックの結果は仕事の評価にしない

ストレスチェックの目的は、従業員のメンタルヘルス不調を発見するために実施されています。

 

ですが、従業員からすると、ストレスチェックの結果が仕事の評価や解雇に影響が出るのではないかという不安を抱いてしまう可能性があるのです。

 

そのため、企業は、目的に沿ったストレスチェックを実施して、ストレスチェックを仕事の評価にしないことを従業員に事前説明をし、社員が不安にならないようにしましょう。

まとめ

ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止のため創設された制度です。

 

ストレスチェックは、通常の事業の問題と比べると、優先順位が下がりがちですが、メンタルヘルスケアを放置しておくと、生産性の低下や離職の増加につながる場合もあります。

 

ストレスチェックを義務と捉えるのではなく、大切な人的資源を守るための制度として取り組みましょう。

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