コラム

出向とは?左遷との意味の違い、メリット・デメリット、必要書類について解説

2025.11.07

出向という言葉に対して、左遷といったネガティブなイメージを持つ方もいるでしょう。

 

ですが、人材育成や企業活動を円滑に進めるために、企業が、従業員に出向させることがあります。

 

今回は、左遷との意味の違いや、メリット・デメリット、必要書類について解説します。

 

 

出向とは

出向とは、従業員が勤務先に雇用されている状態で、別の企業で一定期間働くことです。

 

出向先は、一般的に、グループ会社のように、勤務先(出向元)の関連会社になりますが、取引先など異なる企業に出向することもあります。

 

出向は、業務命令のため、従業員は、正当な理由がなければ拒否できません。

 

ですが、「その命令が、権利を濫用したものと認められる場合には無効とする」と規定している、労働契約法14条によって、出向の命令は、妥当性のある判断が求められます。

出向の種類

出向には在籍出向と転籍出向(移籍出向)の2種類があります。

 

以下で詳しく見てみましょう。

在籍出向

在籍出向とは、出向前の企業に籍をおいて、出向先で働くことです。

 

そのため、雇用に関する契約は、出向前の企業と締結されています。

 

出向前に、籍をおいている出向元から、出向の期間が言い渡され、1年以上の長期的な就業になることが多いです。

 

出向という場合、一般的に、在籍出向を指します。

転籍出向

転籍出向とは、出向前の企業との雇用関係を終了して、出向先の企業に籍をおきます。

 

そのため、雇用契約は、出向先の企業と結びます。

 

出向の期間は決まっておらず、給与体系や雇用規定は、出向先に従います。

出向と左遷の違い

左遷は、地位の降格を伴う人事異動のことです。

 

ですが、役職は同じでも、本社から地方支社への異動や、同じ社内でも重要度が低い部署に異動することも左遷と見なされることがあります。

 

左遷は地位の降格を伴う場合もあるため、従業員のモチベーション低下や退職につながるケースもあります。

 

一方、出向は、地位の降格を伴うことと伴わないことがあるため、出向を左遷と捉えることはありません。

 

また、出向先企業の立て直しをしたり、出向元ではできない経験を積んだりするなど、前向きな目的で出向が行われることも多くあります。

出向と派遣の違い

派遣とは、派遣元企業が派遣先企業と労働者派遣契約を締結して、自社の従業員を他の企業の職務に従事させることです。

 

出向では、出向先企業と従業員の関係は、雇用契約を結んだ雇用関係になります。

 

一方、派遣では、派遣元企業と従業員が雇用関係を結ぶため、派遣先企業と派遣社員の関係は、指揮命令関係となり、派遣先企業は業務の指示だけできます。

 

また、労働者派遣の派遣契約期間は、最長3年と定められているため、契約期間ごとに契約を更新する必要があります。

 

一方、出向は、法律的な期間の定めがないため、一般的に、出向前に期間を定めます。

出向の目的

出向の目的には、どのようなものがあるのか、以下で見てみましょう。

人材教育

人材教育のために、従業員を出向させることがよくあります。

 

自社と異なる職場で働くと、仕事に対する視野が広がったり、業務に役立つスキルを身につけることができます。

 

従業員の持ち帰った知識やスキルを社内に共有すると、チーム全体のスキルアップも図れます。

企業間交流

出向元企業と出向先企業の結び付きを強化させるために、従業員を出向させることもあります。

 

出向した従業員が、2つの企業の橋渡し役となって、2社間でスムーズなやり取りができるようになります。

 

従業員が出向先企業で人脈を形成すると、出向元企業の情報を多くの関係者に伝えることができるでしょう。

雇用調整

事業縮小による雇用調整のために、出向を行うこともあります。

 

従業員を解雇しないで、一時的に出向させると、企業は、その間の給与を削減できます。

 

自社の状況が改善した時に出向者に復帰してもらうと、事業規模にあう人材を整えることができるでしょう。

戦略的な経営

戦略的に経営をするために、出向を行うこともあります。

 

例えば、余剰人員がいる部署から、関連会社の人手不足の部署に従業員を出向させると、効率的に従業員を配置できます。

 

出向元企業は人件費を最適化できる一方、出向先企業は人手不足を解消できるのです。

企業が従業員を出向させるメリット

企業が従業員を出向させるメリットは、以下の通りです。

 

・管理職候補の従業員に、さまざまな業務や企業文化の経験を積ませることができる
・グループ内の他企業、取引先や出資先と連携を強化できる
・グループ内の人員配置を最適化できる
・従業員の経験や知見をグループ内の他企業とも共有すると、グループ全体の発展につながる

企業が従業員を出向させるデメリット

企業が従業員を出向させるデメリットを、以下に挙げてみましょう。

 

・労務管理が複雑になる
・従業員が出向先になじめないと、モチベーションが低下する
・グループ外の企業に出向させる場合、情報漏洩リスクがある

出向した場合の給与について

出向した場合の給与は、基本的に、出向元と出向先の話し合いによって決められます。

 

どちらの企業の給与体系や就業規則を適用するのかによって、従業員の給与が上下します。

 

在籍出向の場合、出向元企業との雇用関係が保持されているので、出向元企業が給与を支給することが多いです。

 

ですが、転籍出向の場合、出向元企業との雇用契約は解除されているため、給与は出向先企業の給与体系に合わせた金額になり、出向先企業が、給与を支給します。

出向した場合の残業代について

在籍出向での残業代は、出向元と出向先企業が話し合って、支払う企業が決まります。

 

出向元が支給する場合、出向先企業が残業時間を把握して、出向先に申告することによって、従業員に残業代が払われます。

 

転籍出向の場合、従業員は、出向先と雇用関係を結び、残業代の把握や支給は出向先の規定に従うため、残業代は出向先から支払われます。

 

出向した場合の賞与について

賞与の支払いに関しては、出向元と出向先の話し合って、支給する企業が決まります。

 

賞与は、従業員が成果を出した場合に、対価として給付されるため、出向元の規定によって、出向先が賞与を支払うことが多いです。

 

ですが、予算の関係などで、出向先が賞与の支給が困難な場合、出向元が、出向先の不足分を支払います。

 

出向した場合の退職金について

出向した場合の退職金については、在籍出向の場合、出向元企業が退職金を支払うことが多いです。

 

転籍出向の場合、出向先企業と雇用関係を締結しているので、出向先企業が支払います。

出向の注意点

在籍出向命令を出すときの注意点を挙げてみましょう。

出向命令権がある

企業が、出向命令権を持っている必要があります。

 

出向命令権があると認められるためには、企業と従業員の雇用契約書や就業規則に、出向命令権が記載されていて、従業員が同意していなければなりません。

 

従業員と企業が雇用契約を結ぶと、従業員は就業規則に従う義務が発生するため、就業規則に出向命令権が記載されていれば、従業員は出向命令に従わなければいけないことになります。

 

また、出向元企業と出向先企業との関係が密接であって、出向した業員が、労働条件などで不利益を被らないということも重要です。

出向命令が権利濫用にあたらない

出向命令権が、濫用にあたらないことも必要です。

 

業務上の必要性や出向先の労働条件などを考慮した人選をして、在籍出向命令を出さなければなりません。

 

業務上の必要性と比べて、労働者の被る不利益が大きい場合、権利濫用と判断される可能性があります。

出向命令を拒否できるの?

従業員が出向命令を拒否できるのかについて、見ていきましょう。

在籍出向の場合

在籍出向の場合、不当な理由で出向を命じられていないのであれば、従業員は出向を拒否できません。

 

ですが、介護などの、やむを得ない事情がある場合は、拒否できます。

 

転籍出向の場合

転籍出向の場合、出向元と雇用関係を解消して、出向先と雇用関係を結ぶため、従業員の同意が必要になります。

 

雇用先が変わると、出向先の企業の給与や労働規定に従うため、従業員にしっかり確認をとって、了承を得なければなりません。

出向契約書に必要な書類

出向契約書に必要な書類を以下で見てみましょう。

出向辞令

辞令に、従業員を出向させる根拠になる、「就業規則〇条により」という文言を入れます。

 

出向の年月日や出向先の会社名を入れておきましょう。

 

また、出向期間中は、出向元では休職扱いにする旨を注記することもあります。

出向契約書

従業員が在籍した状態で、出向することを承諾する条項を入れましょう。

 

出向は、就業規則に基づき、従業員の合意がなくても行えますが、承諾していることを明記しておいたほうがいいでしょう。

 

出向期間を定めて、必要に応じて、短縮したり延長する可能性や、出向期間中は出向元では休職扱いであることを明記することも重要です。

 

また、出向の場合、復職後の労働条件や退職金の算定の時に、在籍勤務期間が従業員に不利益になるので、出向期間を在籍期間に通算したり、出向期間の労働条件が出向元よりも不利益になる場合、出向元が、就業規則に従って、補償することを明記する必要があります。

出向通知書

出向先の事業内容、従業員数、資本金といった企業情報、出向期間、賃金、勤務時間、休憩時間などの出向先での待遇を明記しましょう。

まとめ

出向は、左遷のようなネガティブなものだけではなく、実力があって、将来を期待されている従業員として、出向を命じられることもあります。

 

出向命令が自分の予期しないものであっても、出向先で自分の力を発揮して、知識やノウハウを獲得していきましょう。

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