コーポレートガバナンス(企業統治)とは?意味や目的などを解説
2025.11.03
「コーポレートガバナンスという言葉は聞いたことがあるけど、どういう意味なのかよくわからない…」と思っている方は少なくないようです。
昨今、コーポレートガバナンスは、企業の持続的な成長と企業価値の向上のために、注目されています。
今回は、コーポレートガバナンスの意味や目的、強化方法などを解説します。
コーポレートガバナンスとは
コーポレートガバナンス(Corporate Governance)とは、企業の組織ぐるみの不祥事を防ぐため、社外取締役や社外監査役といった社外の管理者が経営を監視する仕組みのことです。
企業統治とも呼ばれています。
株式会社の所有者である株主や利害関係者(ステークホルダー)の利益を最大化するために、企業の不祥事を防ぎ、長期的な企業価値を向上するために、社外取締役、監査役、委員会を設置し、取締役と執行役を分離します。
コーポレートガバナンスは、アメリカなど、世界の各国が取り組んでおり、国際的な重要度が高まっています。
日本では、金融庁と東京証券取引所が、ガイドラインとなる「コーポレートガバナンス・コード」を公表し、上場会社は取り組むことが必須となっています。
コーポレートガバナンスが重要視される背景
コーポレートガバナンスは、以下の2つの理由で、重要視されています。
まず、1990年代のバブル崩壊後、企業による不正や不祥事の発覚が増加しました。
例えば、会計処理や品質管理の不正、過度な時間外労働などです。
こういった不正や不祥事が起きないようにするため、経営を監視する仕組みとして、コーポレートガバナンスが注目されるようになりました。
次に、外国人投資家の持株比率が高まったことが挙げられます。
資金調達のグローバル化が進んで、国際的な競争力を強化する必要が出てきました。
また、外国人投資家の増加によって、経営陣は、公正で透明性のある情報を開示しなければならなくなり、コーポレートガバナンスの重要度が高くなってきています。
コーポレートガバナンスの目的
コーポレートガバナンスの目的について、見ていきましょう。
企業経営の透明性を確保する
コーポレートガバナンスの目的は、企業経営の透明性を確保することです。
コーポレートガバナンスを強化すると、経営戦略や財務状況の情報を適切に管理・把握できるため、経営の透明性を高めながら、不正や不祥事を防止できます。
ステークホルダーの権利や立場を尊重する
ステークホルダー(利害関係者)の権利や立場を尊重することは、コーポレートガバナンスの目的です。
企業は、株主やステークホルダーに利益を還元する必要があります。
コーポレートガバナンスを強化すると、企業の不正や不祥事、情報漏洩といったリスクを防止し、企業経営の透明性を高めることができます。
したがって、ステークホルダーなどの利害関係者と信頼関係を構築できます。
中長期的に企業価値を向上させる
コーポレートガバナンスは、中長期的に企業価値を向上させるという目的もあります。
コーポレートガバナンスを強化することによって、企業価値や信頼性を向上させ、新たな資金調達の機会に恵まれやすくなります。
また、債務状況や経営状況が安定すると、優秀な人材を獲得しやすくなり、長期的に企業の成長につながるでしょう。
コーポレートガバナンス・コードの5原則
コーポレートガバナンス・コードとは、金融庁が策定したコーポレートガバナンスのガイドラインのことです。
ガイドラインに定められている5つの原則は、以下の通りです。
株主の権利・平等性の確保
すべての株主が、公平に権利を行使できるようにするために、必要な情報を提供したり、制度を設計する必要があります。
具体的には、株主総会の円滑な運営、議決権行使についての情報提供、外国人株主を含むすべての株主への適切な対応などが含まれます。
株主以外のステークホルダーとの適切な協働
企業が持続的に成長するには、従業員、取引先、顧客、地域社会などのステークホルダーと信頼関係を構築する必要があります。
企業の収益活動だけでなく、CSR(企業の社会的責任)やサステナビリティの観点から、誠実で責任ある企業運営が求められています。
適切な情報開示と透明性の確保
財務状況、業績、経営方針やESGへの取り組み状況などの非財務情報について、正確で迅速に開示する必要があります。
透明性の高い情報開示は、投資家やステークホルダーと信頼関係を築くために必要不可欠です。
取締役会等の責務
取締役会は、経営の監督機能を担うため、会社の戦略的方向性を示して、その実行状況をチェックする責任があります。
経営の健全性と効率性を維持するには、多様性のある取締役の構成や、独立性の高い社外取締役を登用することが重要です。
株主との対話
企業は、株主と建設的な対話をすることによって、相互理解を深める必要があります。
中長期的な成長戦略や課題について意見交換をして、経営に反映させる視点が大切です。
また、対話を継続することによって、株主と信頼関係を構築することが可能になります。
日本と海外のコーポレートガバナンスの違い
日本のコーポレートガバナンスは、海外のコーポレートガバナンスと大きく異なります。
まず、日本のコーポレートガバナンスは、法律で定められていませんが、ヨーロッパでは、コーポレートガバナンスが法律で定められています。
また、日本のステークホルダーは、株主、従業員、取引先、社会全体など、広い範囲が対象とされています。
ですが、アメリカでは、経営者が株主価値の追求を優先するコーポレートガバナンスが一般的となっています。
コーポレートガバナンスの問題点
コーポレートガバナンスの問題点を挙げてみましょう。
事業のスピードが遅くなる
コーポレートガバナンスに取り組むと、事業スピードが遅くなる可能性があります。
意思決定に時間がかかることによって、成長のチャンスを逃したり、迅速に事業を行えなくなります。
事業によっては、監査から指摘されて、中止を余儀なくされるケースもあります。
社外取締役や社外監査役の人材が不足している
社外取締役や社外監査役を務めるには、専門知識や経験が求められます。
そのため、多くの企業は、社外取締役や社外監査役にふさわしい人が少ないという課題に直面しています。
特に、女性や外国人の人材は、少ない傾向にあります。
株主やステークホルダーへの依存が高まる
ステークホルダーへの利益の還元を重視しているコーポレートガバナンスは、株主やステークホルダーへの依存性が高まる可能性があります。
例えば、中長期的な成長を目指している企業と、短期的な利益を欲するステークホルダーとでは、方向性があっていませんが、企業は、ステークホルダーの考えを尊重する必要があります。
企業とステークホルダーの意見があわないと、企業が思い描いている経営をすることが難しくなるでしょう。
グループ会社も取り組む必要がある
子会社などのグループ会社がある場合、グループ会社もコーポレートガバナンスに取り組む必要があります。
自社がコーポレートガバナンスを強化しても、グループ会社で不正や不祥事が起こると、グループ全体の社会的信用が低下してしまいます。
グループ全体でコーポレートガバナンスに取り組むことによって、グループ全体の不正を防止でき、企業価値や社会的価値の向上につながります。
コーポレートガバナンスを強化する方法
ここでは、コーポレートガバナンスを強化する方法をご紹介します。
内部統制を構築したり整備する
企業の内部統制を構築し、整備しましょう。
企業は、ステークホルダーに財務状況を報告するので、信頼性のある財務状況や透明性の高い情報を開示するために、社内の不正や不祥事を防ぐ必要があります。
社内の不正や不祥事を防ぐためには、内部統制を徹底することが重要です。
社内で内部統制の仕組みを整えて、厳格に監視できる体制を整備しましょう。
社外取締役と社外監査役を設置する
社外の第三者から監視させることは、コーポレートガバナンス強化に必須です。
そのため、社外取締役や社外監査役を設置して、社外の第三者が参加する委員会を設けましょう。
執行役員制度を導入する
執行役員制度を取り入れて、コーポレートガバナンスを強化しましょう。
取締役は、決定権を持って経営の責任を担いますが、執行役員は、経営に関する意思決定権を持たないので、取締役の決定に基づいて業務を行います。
経営層と違う役員がいると、取締役が経営に専念でき、執行役員の存在によって、迅速に現場の業務や意思決定が行われるため、企業の管理体制や内部統制の強化につながります。
従業員がコーポレートガバナンスを理解する
コーポレートガバナンスを強化するには、すべての従業員がコーポレートガバナンスに理解を深めることが重要です。
従業員がコーポレートガバナンスを理解していると、従業員の不正や不祥事を未然に防ぐことが可能になります。
まとめ
コーポレートガバナンスは、企業の情報の透明性を確保し、ステークホルダーの利益や権利を守るために不可欠です。
上場企業は、コーポレートガバナンス・コードが義務付けられていますが、非上場企業も、今後成長するにはコーポレートガバナンスが重要になるでしょう。
コーポレートガバナンスを理解し、その強化に取り組んでいきましょう。
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