コラム

パワハラ防止法とは?その内容や対策法について解説

2023.07.22

パワハラ(パワーハラスメント)は、職場にさまざまな悪影響を及ぼします。

 

2020年6月1日に、パワハラ防止法が施行され、企業が防止措置を取ることが義務づけられています。

 

それによって、パワハラに対する社会の目が一層厳しくなり、企業の対応にも関心が高まりつつあります。

 

パワハラ防止法に違反すると職場環境が悪化するだけでなく、企業名公表といった罰則を受けるリスクも高まります。

 

健全な経営をするためには、パワハラ防止法に則って、組織体制や社内ルールを整えることが必要不可欠です。

 

今回は、パワハラ防止法の内容や企業がどのような対応をすればいいのかについて解説します。

パワハラ防止法とは

パワハラ防止法とは、職場におけるいじめ・嫌がらせを防止するための法律です。

 

正式名称は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」で、略称として労働施策総合推進法と呼ばれています。

 

これによって、企業は、職場内のパワハラ防止のために必要な措置をとることが義務づけられました。

 

大企業は2020年6月1日に施行されましたが、中小企業は2022年4月に施行されました。

 

法律によって義務化されたことで、パワハラに対する社会の監視が強まり、パワハラ行為を放置する企業は、社会的に非難されるでしょう。

 

パワハラ防止法によって法律的にも禁止されたパワハラですが、業務上の指導や教育との線引きが難しく、悪意がなくてもパワハラに該当することがありますので、全従業員が、パワハラについての正しい知識を持ち、理解を深めておくことが重要です。

パワハラの代表的な行為とは

パワハラを防止するためには、どのような行為がパワハラに該当するのかを知っていないといけません。

 

厚生労働省が示しているパワハラの代表的な行為は、以下の通りです。

身体的な攻撃

殴る、蹴る、物を投げつけるという暴力を振るう行為のことです。

精神的な攻撃

身体を攻撃することではなく、精神的な苦痛を与える行為のことです。

 

例えば、暴言を吐いたり、相手を侮辱したり、人格を否定するような行為が挙げられます。

 

他の従業員の前で、長時間大声で威圧的に叱責する、怒鳴る、責任追及や罵倒する内容のメールを本人と他の従業員に送ることも該当します。

 

人間関係からの切り離し

仲間外れのことです。

 

例えば、以下のような行為が挙げられます。

 

・長時間1人だけ別室に隔離して仕事を与えない

・職場のイベントに出席させないこと

・挨拶や仕事のやりとりで無視をする

・職場で孤立させる。

過大な要求

どうみてもできない仕事を従業員に強制することです。

 

例えば、以下のような行為が挙げられます。

 

・経験がないとできないような仕事を未経験の従業員に丸投げする

・対応できないレベルの無理なノルマを強要する

・本来の業務に関係のない作業や私的な雑用を強要する

 

過小な要求

本人の能力より下回る仕事だけしかさせないことや仕事をまったく与えないことです。

 

例えば、営業職にお茶くみや掃除だけをさせることが挙げられます。

個の侵害

プライバシーの侵害です。

 

以下の行為が該当します。

 

・職場外での継続的に監視する

・私物の写真を撮る。 

・家族や恋人のことや信仰する宗教など、業務とは無関係なことを執拗に聞く

・家族や恋人について悪口を言う

・個人情報を、本人の了解を得ずに他の従業員に暴露する。

・通常の会話の域を超えて、プライベートについて根掘り葉掘り聞く

パワハラ防止法に対して企業がするべきこととは

パワハラ防止法に対して、企業はどのようなことをすればいいのでしょうか。

 

パワハラが起きないように対策をするだけではなく、パワハラが起きてしまったときの対処法や再発防止についても考える必要があります。

 

では、パワハラ防止法に対して、企業はどんな取り組みをすればいいのかについて見てみましょう。

パワハラに関する社内方針の策定と周知

経営者は、職場でパワハラに該当する行為をしてはいけないこととその対策を明確にして、従業員に周知する必要があります。

 

また、懲戒規定を策定して、パワハラの加害者を厳正に対処し、就業規則に懲戒内容を規定し、周知しなければいけません。

 

従業員がセミナーや社内報を通じて、どのような行為がパワハラにあたるのかをしっかりと周知・啓発することが重要です。

 

そうすることで、パワハラ防止の効果が高まります。

相談窓口の設置

パワハラについての相談窓口を設置する必要があります。

 

そのためには、企業は、以下のことをしなければいけません。

 

・相談窓口の担当者を決める

・相談後の対応フローを決める

・担当者は相談者のプライバシーを守り、マニュアル通りに遂行できる

 

相談窓口がないと、水面下でパワハラが蔓延する恐れがあります。

相談者に不利益な取り扱いの禁止

企業は、パワハラの相談をしてきた従業員に、「解雇・異動・自宅待機・減給」といった不利益な取り扱いをしてはいけません。

 

また、パワハラの相談者と加害者のプライバシーを保護するために必要な措置を取る必要があります。

再発防止措置

パワハラが起こってしまったら、再発防止の取り組みをすることが非常に重要です。

 

例えば、企業の方針や規定を周知したり、セミナーを開催することやアンケートの実施などが挙げられます。

 

アンケートを見ると、相談窓口が十分機能していたかどうか、対応に問題はなかったかどうかが把握でき、パワハラへの対応について見直すきっかけになります。

パワハラ防止措置をしないと罰則はあるのか?

企業が、パワハラ防止措置を講じていなくても、罰則はありません。

 

ですが、パワハラ問題が訴訟になってしまったら、パワハラ防止措置を講じていないと不利になります。

 

また、パワハラ防止法第33条では、厚生労働大臣が経営者に助言、指導または勧告ができ、勧告に従わない場合、公表できます。

 

企業にとってパワハラ防止措置を講じないことはリスクでしかないと言えます。

まとめ

今回は、パワハラ防止法の概要や企業がパワハラを防ぐ方法について解説しました。

 

パワハラは、企業に悪影響を及ぼすため、パワハラの相談を受けたら速やかに調査を実施し、加害者の処分や被害者のケアを適切にすることが重要です。

 

就業規則を見直したり、従業員への周知や啓発をしっかりと行い、パワハラのない職場環境を作りましょう。

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